ソニーは,光出力が7.2Wと高い赤色半導体レーザを開発し,2008年8月に発表した。プロジェクターに利用した場合に,映画館並みの大型スクリーンに投射できる出力を確保した。発振波長は,高い視感度を得られる635nm。この波長帯のレーザの中では非常に大きな光出力である。また,1W以上を出力できるレーザとしては小型に仕上げた。(本誌)

今西 大介
ソニー コーポレートR&D コアデバイス開発本部 ディスプレイ開発部 光デバイス課 統括課長 主任技師

7.2Wの光出力を実現した赤色半導体レーザ

 我々は,前面投射型プロジェクターや背面投射型プロジェクター(以下,リアプロ)の光源向けに,高出力の赤色半導体レーザを開発した。2008年2月に完成し,同年8月に発表した。発振波長は人間の視感度が高い635nm(室温(25℃)で634.8nm)で,7.2Wという高い光出力で連続発振できる。最大出力は16Wである。

 レーザの大きさは縦25mm×横14mm×厚さ10.4mm。厚さ4.4mmのヒートシンクに幅10mm×奥行き0.7mm×厚さ0.1mmのレーザ素子を実装した。1W以上を出力できるレーザとしては非常に小さい。40℃まで動作可能で,10~35℃での発振波長の変化は630n~636nmと,わずか 6nmである。信頼性も十分で,25℃,光出力6.6Wで連続発振した場合の寿命(光出力が初期値から半減するまでの時間)は約2000時間と長い。

レーザはプロジェクター向き

 レーザ光源は,プロジェクターに適している。UHPランプやLEDに比べても輝度が高く,かつ色純度も高いためだ。色純度が高いほど色再現範囲は拡大し,美しい映像を実現できる。今回開発した赤色レーザは,視感度の高い635nmの波長で発光する。このため,鮮やかな赤色を得られる。例えば,発振波長が645nmから635nmに変わることで人間の視感度は1.6倍に高まるため,プロジェクターの輝度向上につながる。

『日経エレクトロニクス』2009年6月29日号より一部掲載

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