チャップマン 純子
科学技術振興機構 研究開発戦略センター 海外動向ユニット

 人口は約460万人,国土面積は東京23区よりやや大きい程度と小国ながら,近年は著しい経済発展を遂げているシンガポール。一人当たりのGDP(国内総生産)は,既に日本を追い抜くまでに成長している。

 スイスInternational Institute for Management Developmentが発表した世界競争力総合ランキングでは,2007年,2008年共に第2位を獲得しており,ビジネスや行政の効率に関する複数項目でも,世界第1位あるいは上位にランクインしている。シンガポールが国際競争力を著しく向上させているのは明らかであり,どのようにして発展を成し得たのか,同国の政策の特徴を探ることは注目に値する。

 シンガポールでは政府が事実上の一党独裁であることからトップダウン政策が機能し,政府の強いリーダーシップが発揮される場面が多い。政策目標の根幹は「経済発展」で,GDP成長と雇用創出に最も重点を置いている。

GDPとその成長率

R&D費をGDP比で3%に増加

 シンガポールで現在実施されている科学技術やイノベーションに関する主要政策が,2006年に発表された「科学技術計画2010」である。同計画では戦略目標として,研究開発(R&D)費の増加などを掲げている。2010年までの具体的な数値目標として,(1)総R&D費の対GDP比を3%に増加させる,(2)総R&D費に占める民間セクターからの負担割合を2/3とする,(3)労働力1万人に占める研究者数を日本やスウェーデンと同レベル(100人以上)に押し上げる,としている。また製造業とサービス業をシンガポールの経済成長における2大原動力とする同計画において,エレクトロニクス,化学,生物医科学,精密工学,輸送工学,一般工業を,製造業での主要産業クラスターとして位置付けている。

『日経エレクトロニクス』2009年6月15日号より一部掲載

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