これまで,電圧モード制御や電流モード制御といった線形制御方式に比べてマイナーな存在だったヒステリシス制御などの非線形制御方式。今,この非線形制御方式が注目を集めている。簡単な回路構成で,高い負荷応答特性が得られるからだ。既に,一部のデジタル家電や家庭用ゲーム機,パソコン周辺装置などでの採用が始まっている。非線形制御方式が抱えていたデメリットも克服されつつあり,今後適用される電子機器が一気に増える可能性が出てきた。

DC-DCコンバータの制御方式における大きな三つの流れ

 ヒステリシス制御をご存じだろうか。この制御方式を採用した最も身近な電子機器は電気ごたつである。ある温度以下になるとサーモスタットが「カチッ」と鳴ってスイッチがオンになり,しばらくして温度が一定値以上に上がると再び「カチッ」と音がしてスイッチがオフになる。この制御に必要な回路は,基準温度と比較するコンパレータだけだ。

 この制御方式をスイッチング・レギュレータ(DC-DCコンバータ)回路に適用したのが「ヒステリシス制御レギュレータ」である。制御方式の呼び名はいろいろある。比較的年配の技術者は「バンバン(Bang-Bang)制御」と呼ぶ人が多いようだ。出力のリップル電圧,もしくはリップル電流を使ってコンパレータを動作させるので「リップル制御」と呼ぶ技術者もいる。かつては,「フリーランニング(free-running)制御」と呼ばれていた時期もあった。ただし,最近の国際学会などでは「ヒステリシス(hysteretic)制御」という呼び名が定着してきたようだ。

 現在,ヒステリシス制御などの非線形制御方式を採用したスイッチング・レギュレータは,デジタル家電や家庭用ゲーム機,パソコン,パソコン周辺機器などの電源回路に数多く採用されている。市場規模から見れば,決してマイナーな存在ではない。ところが,教科書や参考書にその名前が登場することはあっても,技術的な解説はほとんど掲載されておらず,その詳細は意外なほど知られていない。

『日経エレクトロニクス』2009年6月15日号より一部掲載

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