NTTデータイーエックステクノは,データ・センターなどに向けて380Vという高電圧で直流を給電する高電圧直流給電(HVDC)システムを開発した。課題だった電流遮断時のアークや,人体などへの感電に対する対策にメドを付け,2009年度中の実用化を目指している。同社の担当者が,開発した直流給電システムについて解説する。(本誌)

NTTデータ イーエックステクノ
代表取締役常務

岡田 實
取締役
吉岡 功二
開発部 部長
羽田 正二

 情報システムの電力消費量がここ最近,急拡大している。これに伴い,サーバー機などIT機器の冷却問題をはじめ,データ・センターの電力消費に関するさまざまな問題が生じている。データ・センターの電力消費を高効率化する決め手として,「高電圧直流給電(HVDC:high voltage direct current)システム」に注目が集まっている。

 電力会社から送電されている交流(AC)の電力は,最終的には直流(DC)に変換されてIT機器内にあるマイクロプロセサなどの電子部品で用いられている。一般的にデータ・センターでは,電源の瞬断対策として,無停電電源装置(UPS)を使用したシステムを構築している。このため,蓄電装置への変換が含まれ,商用電力からIT機器内に至るまで3回のAC-DC変換を実施しており,変換ごとに電力損失が発生しているのが現状である。

 現状のシステムに対し,直流給電システムでは,商用電力をまず直流に変換し,直流のままIT機器に電力を供給する。これにより,2回の変換ロスをなくして効率の向上につなげることができる

 しかも,いくつかの変換装置が不要になるため,システム全体の価格低減や省スペースに寄与するほか,部品が減ることから故障のリスクが減り,信頼性の向上につながる。

変換ロスを減らして効率向上
『日経エレクトロニクス』2009年6月15日号より一部掲載

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