米国がプラグイン・ハイブリッド車の開発にがむしゃらだ。「スマートグリッド」との連携に,巨額の資金をつぎ込む。この熱狂に日本企業は距離を置き,欧州企業は団結して対抗しようと試みる。一方,インドや中国は電気自動車の普及に邁進し始めた。電動車両のシンポジウム「EVS24」から各国の取り組みを報告する。

米国はハイブリッド車の遅れをプラグイン・ハイブリッド車で巻き返す算段

 「クルマを米国に取り返す」(米エネルギー省(DOE:Department of Energy)─。米Chrysler LLCや米General Motors Corp.の経営破綻で地に墜ちた自動車産業を復活させようと,米政府が今,躍起になっている。そこでカギとなるのが,プラグイン・ハイブリッド車と「スマートグリッド」である。

 具体的には電力の送電網を高機能化して家庭につなぐことを意味するスマートグリッドに,充電可能なハイブリッド車であるプラグイン・ハイブリッド車の充電装置を組み込む。「ネクスト・ハイブリッド車」(トヨタ自動車)といわれるプラグイン・ハイブリッド車の開発を,スマートグリッドの整備に併せて推進することで,これまでの電動車両開発における遅れを一気に取り戻すもくろみである。次世代車両の本命とされる電動車両で巻き返せば,次の自動車産業をリードできると米政府は考えている。

 このために,投入する資金がケタ違いだ。スマートグリッドの整備に約1兆円を準備する。プラグイン・ハイブリッド車に関しても,2015年までに100万台を普及させる数値目標を掲げ,購入補助金や開発費などとして約1兆6000億円を用意する。

 米国の産業界はこの巨額の資金を前に沸き上がっている。ノルウェーで2009年5月13~16日に開催された電動車両のシンポジウム「EVS24(24th International Battery, Hybrid and Fuel Cell Electric Vehicle Symposium & Exhibition)」では,全講演数370件のうち米国の企業や研究機関による講演が63件も占め,それらのほぼすべてがスマートグリッドやプラグイン・ハイブリッド車への取り組みをアピールするものだった。

数値目標とベンチャー育成

『日経エレクトロニクス』2009年6月15日号より一部掲載

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