牧山 クリストス
シリコンプラネット 代表取締役社長

 青い海,白い家,美しい海岸線と無数の島々,そしてパルテノン神殿に代表される古代文明の遺跡─。ギリシャといえば,多くの人はこのようなイメージを持っているのではないだろうか。

 世界有数の観光立国であるギリシャだが,実は今,マイクロエレクトロニクス分野でも大きな注目を集めている。特に,高周波の半導体設計分野における開発拠点として,欧米の大手半導体メーカーが利用するケースが増えている。エレクトロニクス分野でのベンチャー企業も多数,誕生しつつある。

 ギリシャのベンチャー企業にとって,アジア地域,中でも日本市場への関心は高く,日本のメーカーとのビジネスを望む企業は少なくない。しかしながら,日本のメーカーにとって,ギリシャはまだまだなじみの薄い国である。ここでは,なかなか紹介されることの少ないギリシャの国情を示しながら,特にエレクトロニクス分野でどのようなビジネスが生まれつつあるかを解説する。

ベンチャー企業を育てる

主力産業は観光と海運

 地中海の南東に位置するギリシャは,人口約1120万人の小国である。国土面積は日本の約1/3で,その約80%は山岳地帯と3000以上の島々で構成される。2007年の国内総生産(GDP)は3138億米ドル(世界で第27位)。主力産業は観光と海運サービスだ。中でも観光は,自然環境や歴史遺産に恵まれているため,年間約1900万人の観光客が訪れる。海運は古代ギリシャ時代以来のもので,ギリシャ人船主の貨物船や大型オイルタンカー船舶所有量は世界一である。

『日経エレクトロニクス』2009年6月1日号より一部掲載

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