豊田 豊
青木 俊明
アジレント・テクノロジー 電子計測サービス部門

連載の過去2回では,抵抗測定における不確かさの算出方法について解説した。今回は,測定の対象となる分野を高周波電力に変えて,不確かさの算出方法を紹介する。基本的な考え方は,抵抗測定のときと同じだ。しかし,高周波電力測定には,高周波ならではの難しさがある。その一つが,高周波コネクタの取り扱い方である。これを誤ると信頼性の高い測定が実施できず,不確かさが非常に大きな値になってしまう。(本誌)

パワー・センサとパワー・メーター

 第1回(2009年4月6日号)と第2回(2009年5月4日号)では,抵抗測定に関する不確かさを算出する方法を紹介した。第3回となる今回は高周波電力の不確かさの算出方法を説明しよう。具体的には,2 GHzの信号を出力する発信器の高周波電力をパワー・センサとパワー・メーターを用いて測定する場合の不確かさの算出方法である。発信器から出力された高周波信号をパワー・センサに入力すると,直流電圧に変換される。パワー・メーターでは,この直流電圧を高周波信号電力に換算して表示する。

 不確かさの基本的な算出方法は,第2回で紹介した標準抵抗を使った抵抗測定における手法に,かなり近い。つまり,パワー・センサの校正係数の不確かさとパワー・メーターの基準信号の確度を利用して,高周波電力測定における不確かさを求める。しかし,高周波電力測定における不確かさの算出では,高周波測定ならではの考慮すべきポイントがいくつか存在する。こうしたポイントを押さえずに測定を実施してしまうと,信頼性が高い測定結果が得られないので注意が必要だ。

『日経エレクトロニクス』2009年6月1日号より一部掲載


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