米国の電力網が今,大きく変貌しようとしている。通信ネットワーク技術を積極的に活用することで,停電などの障害把握の迅速化や,エネルギーの効率的な利用を目指す。通信分野やIT関連の企業が,こぞって市場参入を表明した。これらの企業は,米国以外の市場への進出も視野に入れる。果たして日本のメーカーには,どのような影響があるのだろうか─。

スマートグリッドとは何か

 「電気自動車から冷蔵庫まで,現在のインターネット網の10~100倍の数の機器が接続される,かつてないネットワークが誕生する可能性がある。スマートグリッドは,我々の分野だけでも,1000億円規模の市場になりそうだ」(米Cisco Systems,Inc.,Network Systems and Security Solutions,vice presidentのMarie Hattar氏)。「家庭の機器のエネルギー利用状況を,もっとリアルタイムに消費者に知らせるべきだ。もちろん,オープンで非独占的に利用できる形態でないといけない。そこに,新たなイノベーションが生まれる」(米Google Inc.)。「2015年までに,当社の家電製品の多くを,スマートグリッドに対応させる」(米白物家電大手のWhirlpool Corp.)。

 米国で,送電網インフラの高機能化に向けた取り組みが活況を呈している。通信/IT技術を駆使して,電力網を高機能化するという意味で,「スマートグリッド」と呼ばれる。米国の電力事業者や電力設備系企業のみならず,米IBM Corp.やGoogle社,Cisco Systems社などのIT系メーカーや,米Intel Corp.,米Texas Instruments Inc.(TI社)などの半導体メーカー,米Verizon Wireless社といった通信事業者まで,その取り組みを盛んに喧伝する状況にある。

『日経エレクトロニクス』2009年6月1日号より一部掲載

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