1980年代の初め,米国カリフォルニア州のテレビ工場に私は勤務していた。第2次石油危機後の深刻な不況で,米国では自動車産業だけでも約30万人(業界全体の40%に相当)がレイオフされ,私の工場も過剰な在庫と人員を抱えて深刻な状況だった。

 リストラが当たり前だった当時,工場長は日本的経営の見本となるべく,ぎりぎりの挑戦をした。ノーレイオフ,その代わり「週休3日,賃金カット,昇給なし」というワークシェアリングである。

〔以下,日経ものづくり2009年6月号に掲載〕

金 辰吉(こん・たつよし)
ワークセルコンサルティング 代表取締役社長
1978年に早稲田大学理工学部を卒業しソニーに入社。同社生産革新センター長,ソニー中村研究所専務取締役などを経て2007年4月から現職。セル生産方式の命名者。JPEC取締役。日本能率協会と社会経済生産性本部では講師などを務める。