「実践モジュラーデザイン」は,部品の種類に対して相対的に製品の多様化を図り,収益を改善するための「モジュラーデザイン(MD)」について,科学的・体系的に解説するものです。

 筆者は20年前にモジュラーデザイン(MD)の研究を開始し,試行錯誤の末,図に示すMDへの到達プロセスを築いた。当初は,モジュール化の基本的な理論である「2.モジュール数およびその使い方」を中心に活動した。しかし,組織にうまく展開,定着できず,その原因を考えて対策してきた結果,図の形になった。

 「1.」~「3.」は事前準備活動であり,「1.」はMD活動のインフラストラクチャーの整備,「2.」は最少の部品数で最大の顧客要求に応える数値表とその適用方法,「3.」は根拠ある目標を設定し実行可能な計画を策定する方法である。

 「4.」~「8.」はモジュール化活動の中心部分であり,「4.」は部品が生まれる根源的な原因である製品種類を必要最小限に絞り込む方法,「5.」は技術的に陳腐化しないモジュラー部品を一括設計して製造革新にまでつなげる方法,「6.」は後工程の知恵をモジュラー部品に織り込む方法,「7.」は設計手順書作成の過程で製品専用部品をモジュラー化して設計の自動化へつなげる方法,「8.」は最大の難題であるキャッシュフロー化の方法である。

 「9.」「10.」は活動の成果を個別製品へ確実に適用する活動であり,「9.」は編集的に開発を進めるシステムを構築する方法,「10.」はMD活動を緩みなく永続させる歯止めの方法である。

 本コラムでは今後,第11回まで図の主要な部分を紹介していくが,今回はプロセス「1.」を紹介する。

〔以下,日経ものづくり2009年6月号に掲載〕

図●MDへの到達プロセス

日野三十四(ひの・さとし)
モノづくり経営研究所イマジン 所長,日本IBM 顧問
1968年に自動車メーカーに入社。1980年にトヨタ自動車のベンチマーキング開始。1988年にトヨタの部品共通化能力を超える手法を目指し,MDの研究を開始。2000年に経営コンサルタントとして独立。2002年に『トヨタ経営システムの研究』(ダイヤモンド社)を出版(韓,台,米,タイ,中で翻訳出版)。2003年に日本ナレッジ・マネジメント学会から研究賞受賞。2003年から日韓の重工業や電機メーカーなどでMDをコンサルティング。2007年に“製造業のノーベル賞”といわれる米Shingo Prizeから研究賞受賞。2008年から日本IBM顧問。