ハイブリッド車や自動変速機で多く使われる内歯車。現状は熱処理をした後、歯面を仕上げ加工せずに組み付けている。加工コストが高いためだ。三菱重工業は内歯車用の研削盤「ZI20A」を開発し、4月に発売した(図)。工具コストを従来のホーニング盤の1/6に下げることができる。

 摩擦する面や、転動する面は、硬くあってほしい。しかも高精度で、滑らかであってほしい。軸受の内輪、外輪を見れば分かるように、こうした面は、まず切削し、次に熱処理をして硬さを出し、最後に研削して精度を上げ、表面を滑らかに仕上げるのが常識だ。歯車でも普通はそうしている。
 一つだけ例外がある。ハイブリッド車や自動変速機で多く使われる内歯車だ。素材を旋削し、ブローチ加工、またはギアシェーパ加工で歯形を作る。ブローチの工具が通る形状ならブローチ、通らない形状ならギアシェーパを使う。その後、熱処理をする。ここまでは外歯車と同じ。ここからが例外だ。
 実は内歯車は、研削をせずに組み立ててしまうことが多い。これでは熱処理による歪みが残る。内歯車は中央が大きく抜けたリング状をしている。中が詰まった形状に比べて、熱処理による歪みはどうしても大きくなる。さらに最近は薄肉化の要求が厳しくなってきた。

ホーニングはぜいたくだ

 この造り方に対して「なぜ熱処理後に仕上げ加工をしないのか?」と責めるのは簡単だ。しかし、これには事情がある。研削は外歯車では何でもない後加工なのだが、内歯車に限っては工具コストが高すぎて、簡単にはできないのである。

以下,『日経Automotive Technology』2009年7月号に掲載
図 開発した研削盤「ZI20A」
内歯車の歯面を研削する。