日本では1979年に初めて日産自動車「セドリック」「グロリア」に搭載されたターボチャージャ。翌年には、三菱自動車「ギャラン」「エテルナ」にも広がった。欧州ではディーゼル車だけでなくガソリン車でも装着が増えているターボの最新動向を、三菱重工業に聞いた。

 排ガスでタービンを回して吸気の圧力を高め、エンジンに送り込むターボチャージャ。自然吸気エンジンより吸入空気量を増やせるため、トルクの向上につながる。ただ、ガソリンエンジンでは燃焼室内の温度が上がり過ぎるとノッキングが起こるため、従来は圧縮比が上げられず、燃費が悪かった。
 排ガス浄化にも課題があった。ターボがあると排ガス温度が低下して触媒が暖まるのが遅くなる。既存のターボエンジンが平成12年規制をクリアできなくなったことを機に、軽自動車を除くと2002年には国産車からターボ車がほとんどなくなってしまった。  ところが欧州ではディーゼル車の拡大、そしてガソリン車でもダウンサイジングのトレンドが強まり、ターボエンジンは復活しつつある。ドイツVolkswagen社の「TSI」エンジンや、フランスPeugeot-Citroenグループのツイン・スクロール・ターボといった小排気量のターボエンジンが増えている。
 TSIエンジンを例に挙げると、シングルターボを採用した新型「ゴルフTSI Comfortline」は、最高出力が90kWとスーパーチャージャとターボを併用する上位グレードには劣るものの、小径のターボを採用し1500rpmという低回転から最大トルクを発揮する。

2ステージターボも開発中

 乗用車用ターボをタービンサイズ別に、「TD015」から「TD05」までそろえる三菱重工によれば、ターボの効率が向上し、より小さなターボで同等の出力を得られるようになったという。
 1985年には排気量2.3Lエンジンに比較的大きなTD05ターボを組み合わせ127kWの出力を得ていたが、現在は同等の出力を1.5L+「TD035」クラスの小型ターボで実現できる。この場合、タービンの径は従来の77%で、慣性モーメントは27%低減できる。回転の立ち上がりが早まるので、ターボラグ低減につながる。小型化のトレンドによって三菱重工では現在「TD025」の生産量が最も多い(図)。

以下,『日経Automotive Technology』2009年7月号に掲載
図 現在最も生産量が多いのが「TD025」
排気量1.4Lクラスのガソリンエンジンに採用されている。