クルマは、IT(情報通信)技術で大きく変わろうとしている。そこで本コラムでは、ITの側面からクルマの進化の方向性を示す。第1回のテーマは「カーナビの地図更新」だ。

 日立製作所は、カー・ナビゲーション・システムの地図データを常に最新に保つ「地図差分更新技術」を開発した。ユーザーは、携帯電話もしくはカーナビに内蔵する通信モジュールを使って、オンラインで地図データに変更があった部分のみを書き換えできる。一度の更新に必要なデータ量を抑えられるため、通信コストも安くできる。
 HDDのカーナビの地図更新には、全体更新と差分更新の2種類がある。
 全体更新は、ユーザーが最新版のDVDやCDを購入し、自ら書き換え作業をするか、HDDユニットを取り出して販売店に送付する。もしくは販売店に出向いて書き換え作業を依頼するなど、手間のかかる作業であった。
 一方の差分更新は、更新のあったデータのみを書き換えるもの。パソコンでダウンロードして、USBメモリーで書き換える方法や、オンラインで更新する方法がある。差分更新は、新しい地図データとその周囲の古いデータの間で、道路の接続性を保つように設計してあるのが、従来の全体更新との違いだ。
 オンラインの差分更新は、自動車メーカーやカーナビメーカー各社が近年相次いで実用化しているものだ。現在実用化されているオンラインの差分更新技術は、変更のあった部分を更新するという意味では共通で、全体更新に比べれば短時間で更新できる。  しかし、更新した道路が多い場合はデータ量が多くなり、更新範囲を絞り込むなど通信データ容量を少なくする余地は残されている。
 当社が開発した技術は、他社同様に地図データを“メッシュ“という四角の枠で区切って管理するだけでなく、複数のメッシュにまたがる道路のつながりを“エレメント”というオブジェクトで管理する。更新のあった道路は“更新エレメント”として検出する。

以下,『日経Automotive Technology』2009年7月号に掲載
図 カーナビの地図データの更新(日産自動車の場合)
ユーザーが手持ちの携帯電話をつなげてオンラインで地図データを更新できる。そのほかに、インターネット経由でパソコンに保存した地図データをUSBメモリーに保存し、USBメモリーをつなげて地図データを更新することも可能。