より効率のよいモビリティを目指して、自動車は大きく変わろうとしている。この新連載では、車両の電動化や代替燃料の開発、新興国市場の動向など、世界各地の新しい潮流をいち早く取り上げ、将来の自動車の姿を探る。第1 回は米国の電気自動車事情である。

 日本では2009年、三菱自動車「iMiEV」、富士重工業「スバル プラグイン ステラ」など、自動車メーカー製の電気自動車(EV)の販売が本格化する。一方、米国でも2008年に米Tesla Motors社が、英Lotus Car社「エリーゼ」のシャシーをベースにLiイオン2次電池を搭載したEV「Roadster」を発売し、モーターショーでもEVの出展が目立つようになってきた(図)。
 ここにきて、米国でEVが注目され始めた理由はいくつかある。一つは、オバマ政権のグリーンニューディール政策で低炭素社会に向けての方向性が明らかになり、クリーンなクルマの開発に対する投資が積極化し、ベンチャー企業が増えていること。また、CARB(カリフォルニア州環境保護局)によるZEV(ゼロエミッション車)規制フェーズ3(2012~2014年モデル)への対応として、自動車メーカにおけるEVもしくは燃料電池車の準備が進んでいる。さらに米ビッグ3の経営再建策で、次世代車両の重みが増しており、政府から開発の具体的なロードマップ提示が求められている。
 大手自動車メーカーからはまだEVが市販されておらず、米国でのEV市場は本格的には立ち上がっていない。EVベンチャーの中には、事業の実態が不明瞭な企業も多く存在する。そこで、モーターショーでのインタビューや各種の取材を通して、実際に市販されているか、もしくは2009〜2010年に発売の可能性が高い主要なEVを表にまとめた。ここで取り上げたのは、近距離移動用のコミューターではなく、“高速道路でも走行可能な動力性能を持つEV”である。

以下,『日経Automotive Technology』2009年7月号に掲載
図 米Tesla Motors社に並ぶ「Roadster」
ベースモデルはソフトトップで、ハードトップはオプションとなる。出力185kWのモータを搭載し、スタートから96km/hまでの加速は3.9秒。