マツダ プログラム開発推進本部 主査 猿渡 健一郎氏
2009年4月末までパワートレイン開発本部パワートレイン開発推進部で数々のパワートレーン開発を手がけてきた。2009年5月に現職に異動、今後は主査として車両全体の開発を担当することになる。

 「ユーザーがさまざまな条件で使用しても違和感を覚えないことが開発の一番の目標でした」
 2009年4月、横浜にあるマツダの研究所で、同社プログラム開発推進本部主査(当時パワートレイン開発本部副主査)の猿渡健一郎は報道関係者を前に熱弁を振るっていた。猿渡が2年余りにわたって開発を手がけてきた新技術が、いよいよ日の目を見ようとしている。その事実が、知らず知らずのうちに気持ちを昂らせていた。
 その技術とは、マツダが6月に発売する新型「アクセラ」に搭載する新開発のアイドリングストップ機構「i-stop」である。アイドリングストップ機構は、クルマが停車した際にエンジンも停止することで、無駄な燃料消費を抑え、CO2の排出を抑制するシステムだ。このシステム自体は決して珍しいものではなく、すでに多くのメーカーで実用化されてきた実績がある。しかし、数万円のコストアップに見合う燃費向上メリットを得るのが難しく、これまで広く普及するには至らなかった。
 しかしマツダは今後、燃費向上技術の柱として、普及に本気で取り組む。すでに日本に先立ってアクセラの海外モデルである「Mazda3」を発売した欧州では、2.0L・直噴ガソリンエンジンを搭載したモデルにi-stopを標準装備した(i-stop搭載モデルは2009年夏ごろ発売予定)。エンジン本体の効率向上などと相まって、このモデルでは、従来よりも12%燃費を向上させた。

以下,『日経Automotive Technology』2009年7月号に掲載