植物を原料とする“バイオ樹脂”の使用範囲が広がっている。石油を原料とする従来の樹脂に混ぜるものから、植物から作った樹脂で完全に置き換えるものまである。内装だけでなく、耐熱性や耐久性の確保が厳しいエンジンルームにまで使われだした。

 「植物を原料とする樹脂を使うことで、石油を原料とする従来の樹脂よりもコストは低く、耐久性は高められた」(デンソー材料技術部主任部員の後藤伸哉氏)—。これまでの“バイオ樹脂”(植物由来樹脂)の常識を覆す使い方である。
 バイオ樹脂は、石油を原料とする樹脂と比べると、CO2排出量を減らせるため、環境性能は高い。しかしその一方で、コストは高く、性能は劣るため採用車種や採用部位は限られていた。
 ここにきて、完成車メーカーや部品メーカー各社が、バイオ樹脂を積極的に採用してきている。デンソーは、バイオ樹脂を使ったラジエータタンクを近く量産する(図)。
 他社が、比較的使用温度の低い内装でバイオ樹脂の適用範囲を広げているのに対し、同社は使用環境の厳しいエンジンルームに用いた。一方のトヨタ自動車は、2009年内に発売する車種で、内装の面積の60 %にバイオ樹脂を使う方針を打ち出した。
 マツダは、100 %バイオ樹脂のシート表皮を実用化した。石油を原料とする樹脂とバイオ樹脂を混ぜるケースが多い中、シート表皮についてはバイオ樹脂のみで実現している。ホンダも、新型車のシート表皮にバイオ樹脂を使った。三菱自動車は、バイオ樹脂に竹を強化材として混ぜているのが特徴。

以下,『日経Automotive Technology』2009年7月号に掲載
図 バイオ樹脂を使ったラジエータタンク(デンソー)
(a)前面から見たラジエータ。上下にラジエータタンクがある。(b)ラジエータを上から見たところ。従来のラジエータタンクは、塩化カルシウムに耐える仕様にするため、高めのコストになっていた。バイオ樹脂を使うことで、石油を原料とする樹脂よりもコストを下げることができた。