山寨機(さんじゃいじ)。中国の電子機器産業を語る上で欠かせないキーワードである。日本でこの言葉はノン・ブランドの携帯電話機と同義で使われているが,それは間違い。山寨は「行政の管理から逃れた」という意味で,パソコンや白物家電の山寨機も存在する。

 携帯電話機の山寨機は,「黒手機」(手機は携帯電話機の意)と呼ばれることもある。そのゲリラ的なイメージが似つかわしくないほど,中国で巨大な市場を形成している。年間販売台数は実に1億台以上。「金額ベースでは400億元(1元=14.5円換算で5800億円)。中国の深市で従事する人口は20万人とされている」(eetrend.com(電子創新網)を主宰するRichard Zhang(張国斌)氏)という。

山寨機のメッカを訪れた

 携帯電話機の山寨機は大抵,無線機として必要な認証の取得や付加価値税の納付を怠っている。さらに,大手メーカー品の外観デザインを模倣,分かりやすく言えばパクっていることが少なくない。それでありながら公然と流通している。市販価格は正規品のおおむね1/3と安い。我々は2009年4月上旬に,関係者6人にインタビューを実施した。その結果をありのままに紹介する。

猫の額で大量販売

 我々はまず電気街,華強路(ふぁーちゃんるー)を訪れた。

『日経エレクトロニクス』2009年5月18日号より一部掲載

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