頓智・(とんちどっと)の「セカイカメラ」といった製品が出てきたことでAR(augmented reality,拡張現実)技術があらためて注目されている。この分野の第一人者である稲見氏に,ARの最近の状況と今後を聞いた。(聞き手は本誌副編集長 山田 剛良)

(写真:加藤 康)

─ARを応用した製品が次々と登場しています。ARは研究レベルで以前から提唱されていた技術ですが,実用化が見えたことであらためて注目を集めているように思います。

 ARを実現するための環境がそろったからだと思います。コンピュータにつながるカメラやグラフィックス処理能力が高い端末,十分な速度の無線回線が安価で入手できるようになりました。ずいぶん待たされましたが,「ようやく始まったな」という感じです。

 ARは今後,ユーザー・インタフェース設計の中核となり,何年か後には,ARという言葉をあえて使わないくらい普及するんじゃないでしょうか。

 ただし今,実用化が見えているような応用だけがARではありません。例えばセカイカメラなどは,現実の画像にタグを付けて,サーバーから取り込んだ文字や画像情報などを表示する方法を採っています。これは今のコンピュータの処理能力を考えると,その方法がリーズナブルだからにすぎません。ARは本来もっと幅広い概念なのです。

『日経エレクトロニクス』2009年5月18日号より一部掲載

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