これまでの画質や薄さの競争から「省エネ性能」の競争へ…。液晶テレビのトレンドが大きく変わり始めている。そのトレンドの先頭を走る製品を分解し,消費電力低減の実現技術を見た。

消費電力を実測

 「省エネ」を喧伝(けんでん)する液晶テレビが,2009年に入り相次いで登場している。一般家庭での電力消費の約10%を占めるとされるテレビ。消費電力の低さが製品の競争力につながるとの読みから,テレビ・メーカー各社はその性能を激しく競い始めている。

 このトレンドの先頭を走る液晶テレビの一つが,ソニーの「BRAVIA」だ。同社が消費電力の低さを前面に打ち出した最初の製品は,2008年7月に発売した32型の「KDL-32JE1」。消費電力は従来機種比34%減の89Wで,当時として「ぶっちぎり省エネナンバーワン」(同社)を掲げた。実際,過去のテレビと比較しても,消費電力が大幅に削減されている。例えば,同社が2005年10月に発売した32型のBRAVIA 1号機の消費電力は150W。2000年6月に発売した32型CRTテレビは220Wだった。

 本誌は今回,ソニーのKDL-32JE1の後継機種で,同社が2009年2月に発売した32型の「KDL-32J5」を入手した。消費電力84Wをうたう製品だ。「スタンダード・モード」において地上デジタル・テレビ放送を映すという条件で本誌が消費電力を実測してみたところ,56.45Wだった。

 消費電力低減の工夫を探るため,国内テレビ・メーカーやバックライト・メーカーの技術者の協力を得て,この製品を分解した。そこで浮かび上がったのは,製品のウリである「省エネ」の実現にフォーカスした設計思想である。なお,32型で5万円を 切る値付けで話題となったダイナコネクティブ製の液晶テレビ「DY-32SDDB」も併せて分解した。

『日経エレクトロニクス』2009年5月18日号より一部掲載

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