1社に1台,人工衛星
- リアルタイムのレイ・トレーシング目指す,800TFLOPS相当の演算を実現
ケータイの設計思想で低コスト化 - 無線LANを使う,高速版Bluetooth登場
アーク放電を消去する機構を内蔵し,安全性を確保 - 世界最大市場に続々現れた電気/ハイブリッド車
2008年後半からの急激なパネル余剰の進行が呼び水に
- 医療エレ:違和感なく身に着けたい,小型化を志向するライフ・レコーダ
- 組み込みソフト:“日本化”するAndroid,組み込みに向け開発者の団体も始動
- エネルギー:新興国で需要拡大する原子力発電,東芝,日立の取り組み活発に
撮像素子
「人工衛星」と聞くと,皆さんはどういった事業,ビジネスを思い浮かべますか。いろいろなイメージがあるかと思いますが,「自分たちの事業とはあまり関係ないな」と感じる方が多いのではないでしょうか。実際,日本で人工衛星を開発しているのは数社で,ユーザーも国や通信事業者,放送事業者などに限られています。加えて,数百億円もの巨額の開発費,約5年という長い開発期間,用いる部品も高価な宇宙専用品というように,一般的な民生機器とは大きくかけ離れているのが現状です。
こうした流れが今,変わろうとしています。人工衛星が我々にとって身近な存在になる可能性があります。これを実現しようとしているのが,近年,急速に増えつつある重さが100kg以下の超小型衛星です。安価な民生用部品を流用することで,開発コストを1億~2億円,開発期間も1~2年と,これまでの人工衛星に比べて低減しています。
ユーザー層も大きく広がりつつあります。極端な話,会社1社につき1台の人工衛星を所有するという時代がやってくるかもしれません。そのとき,人工衛星は地球規模の超広域センサとして役割を果たし,欲しいデータがほぼリアルタイムで我々の手に入るようになることでしょう。応用範囲は農業やIT,コンテンツに至るまで多岐にわたり,例えばタクシー会社の衛星が道路の渋滞状況をとらえる,地方自治体の衛星が不法投棄を監視する,保険会社の衛星が災害の状況を把握するといったことが考えられます。
この超小型人工衛星の開発で,世界的に先行しているのは日本です。衛星が多く打ち上げられる時代が来たとき,ビジネス的にどのような可能性が広がるのか,そこでエレクトロニクス・メーカーに期待されている役割は何か,今後克服すべき課題にはどういったものがあるのか――。こうした視点から今回の特集「1社に1台,人工衛星」をまとめました。
このほか最新号では,ソニーの液晶テレビ「BRAVIA」の新機種を分解し,分析した解説「省エネ型液晶テレビの実現技術を見る」,車載LANインタフェース規格の一つであるFlexRayの最新動向についてまとめた解説「巻き返せるか“日の丸”車載LAN」も掲載しております。ぜひ,ご一読いただければ幸いです。
日経エレクトロニクス編集長 田野倉 保雄