2003年,三洋電機はグリップ型の動画デジカメ「Xacti DMX-C1」を完成させた。C1の登場によってXactiは市場に浸透し,同社は多彩な後継機を生み出していく。2006年には業界に先駆けて生活防水モデルを手掛けたものの,夏季を逃したことから販売はいまひとつだった。同社は,完全防水モデルで再挑戦する。

量産試作機では,操作中に誤ってグリップ部のフタが開いてしまう問題が発生した。製品では,フタをロックするレバーを小型化して解決している。
量産試作機では,操作中に誤ってグリップ部のフタが開いてしまう問題が発生した。製品では,フタをロックするレバーを小型化して解決している。

「こんな単純なミスに気付かなかったとは…」

 2007年3月,「Xacti」の完全防水モデルを開発していた三洋電機の坂地亮(現・デジタルシステムカンパニー DI事業部 DI企画部 DI企画課)と鈴木茂樹(同事業部 設計一部 機構設計課担当課長)は,ぼうぜんとしていた。その手には,発売を3カ月後に控えた量産試作機が握られていた。最後の社内テスト。まさかそんなタイミングで,撮影中にグリップ部のフタが自然に開いてしまうトラブルが判明するとは,思ってもみなかった。

 フタの内部には電池やSDメモリーカードが収納してある。水中撮影中に開けば,当然ながら故障する。試作機はレバーによってフタにロックをかける構造だったが,レバーが大きすぎ,握って操作をしているうちにロックが外れてしまうのである。坂地らは,完全防水という課題に集中するあまり,こんな簡単なミスに全く気付けなかったのだ。

 それほどまでに,完全防水モデルの開発は難しかった。素材の選定からパッキンの構造,防水テストの方法に至るまで,すべてが手探りだったからだ。

液晶モニターのヒンジがさびる

 話は2006年にさかのぼる。鈴木は,塩水に対して耐久性の高いステンレス素材を探し回っていた。完全防水モデルは海の中でも使えることを前提としたからだ。Xactiは本体と液晶モニターをつなぐヒンジにステンレス製の部品を使っており,海水に触れるとさびてしまう可能性があった。(文中敬称略)

『日経エレクトロニクス』2009年5月4日号より一部掲載

5月4日号を1部買う