ここに挙げたのは,コクヨS&T(本社大阪市)の修正テープを分解したものだ。上のAは,内蔵するテープが長い「ケシピコロング」,下のBはペン型の「ケシピコスリム」である。両方とも,本体を手に持ち,ヘッド部を紙に押し当てて引いて使う。いずれも,未使用のテープを巻いた「送り出しコア」と,使用済みのテープ(インクを載せるフィルム=セパレータ)を回収する「巻き取りコア」を,ゴム製のOリングで連結する構造だ。

 このように両者は,基本的な構造こそ一緒だが,決定的に違う部分がある。テープの長さだ。Bが8mに対し,Aはその3倍以上の26m。このようにテープを長くするには,大きく二つの工夫が必要になった。一つは,セパレータ。主流は厚さ12μm程度だが,これを使うと,筐体が大きくなる。そこで,Bのときに初めて採用した,厚さ6μmの薄いセパレータを使うことにした

 もう一つは,使いはじめから終わりまで,テープを紙に押し当てて引く力(転写荷重)の変化を抑える工夫だ。一般に,このような修正テープでは,使用するにつれて引きが重くなるため,それを緩和する仕掛けが施されている。しかし,Aのようにテープ長が26mともなると,従来の工夫だけでは補いきれず,新しい機構が必要になった。その,Oリングのテンションにかかわる,長いテープを最後まで軽い力で引けるようにした工夫とは…。

*)セパレータを薄くすると,テープを巻く技術にも工夫が必要になった。例えば,巻くときのテンションが強すぎると,本来インクが付着する面とは逆(裏)側に付着してしまい(背面転移),逆に緩すぎるとテープ間がズレてしまう,といった現象が起きる。そのため,試行錯誤して最適なテンションを見つけたという。

〔以下,日経ものづくり2009年5月号に掲載〕