雑誌 特集

今なら間に合う人づくり

2009/04/30 18:00
 

「おや,何かおかしいぞ」。若手技術者と技術の議論をしていて,どうも話がかみ合わなかったり,彼ら彼女らの図面に常識的には考えられないようなミスが散見されたりすることはないだろうか。これらの現象は,あなたの会社に限って起こっているわけではない。背景には,若手技術者の基礎学力や対人関係能力の低下がある。無論,優秀な若手は今でもたくさんいる。だが,平均的な基礎学力は年々低下してしまっているのだ。技術者こそが財産の,技術立国ニッポン。人づくりの強化が喫緊の課題になっている。(近岡 裕,富岡恒憲)

提言:近未来への指針

 平均均点が55点,50点,47点と落ちてきた。今年は41点ぐらいになるかもしれない」。大手自動車関連メーカーの幹部は,2006~2008年度の3年にわたって技術系新入社員を対象に実施したテスト結果を見て,ため息をつく(図1)。このテストは100点満点で,内容は小学校高学年から中学校1年生程度の算数・数学と理科である。正確に学力を把握できるよう,毎年,全く同じ問題を出して解いてもらった結果だ。
 同様に,ある大手総合電機メーカーでも,過去3年にわたって技術系新入社員に対して学力の調査を実施した。こちらのテストの難易度は大学で学ぶ基礎工学のレベルだが,やはり,平均点は年を追うごとに下がっている。このところ「若手技術者の平均的な基礎学力が次第に低下しているのではないか」と心配するベテラン技術者が増えている。その心配が,事実として定量的に証明されつつあるのだ。
 両社は共に人気企業であり,多くの学生が入社試験を受ける,いわば人を選べる立場にある。採用する学生は学部卒業者よりも修士修了者(院卒)の方が多い。例えば,前者の自動車関連メーカーでは,採用者はすべて大卒以上で,学部卒が2割に対し,院卒は8割もいる。にもかかわらず,例えば,三角錐(すい)の体積を求める問題の正答率は約50%しかない。院卒でも解けない技術系新入社員がいるのだ。たとえ公式は覚えていても,辺の長さが小数点を含む数値になると,計算力不足で正答できないというのである。
〔以下,日経ものづくり2009年5月号に掲載〕

図1●ある大手自動車関連メーカーが実施した基礎学力テストの平均点
大卒および院卒の技術系新入社員に対し,過去3年間同じテストを実施した。内容は小学校高学年から中学校1年生レベルの算数・数学と理科。その結果,3年連続で平均点が下がった。同社では,2009年度は41点まで下がるのではないかと予測する。同じテストを50歳前後のベテラン技術者に実施したところ,平均点は85点だった。なお,ベテラン技術者の学歴は高卒~大卒。

Step1:学びに導く仕組み

 若手技術者の基礎学力や対人関係能力を高めたい。技術者のチャレンジ精神を向上させたい。新たな技術の開発やビジネスモデルの構築をリードできる技術者を増やしたい--。現在,多くのメーカーが抱える技術者育成面での課題は,大きくはこの三つである。
 このうち,Step 1で紹介するのは,若手技術者を自立した技術者へと導くための取り組みである(表)。ポイントは二つ。「内容の見直し」と「実態の見える化」だ。
 内容の見直しとは,教育のメニューや指導スタイルの見直しのこと。実態の見える化とは,それぞれの技術者が保有しているスキルや強化すべきスキル,育成の計画とその実績など,人材育成に関する実態を見える化し,より計画的に技術者を育成するためのアプローチである。
〔以下,日経ものづくり2009年5月号に掲載〕

表●若手技術者を,自立した技術者へと導く取り組みの例

Step2:チャレンジ精神に着火

 コストや手間をそれほどかけずに,普通の社員を戦力に変え得るもの。それが,モチベーションだ」。HY人財育成研究所所長の肌附安明氏はこう語る。モチベーションが上がると社員はやる気になり,自ら進んで仕事をこなしていくようになる。チャレンジ精神を発揮し,高い業績をもたらす場合も少なくない。
 モチベーション向上がもたらす大きな効果に気付き,そのための施策を考えて実行に移す企業が増えている。その方法はさまざまだが,共通するのは,社員が自ら望む仕事に取り組ませることだ(図2)。それで高まるモチベーションを成果に結び付けつつ,同時に一皮むけた人材として成長させていくのである。
 注目すべきは,あまりお金や労力がかからない方法でも,心の満足を与えるものであれば,社員のモチベーションは十分高まり得るということだ。
〔以下,日経ものづくり2009年5月号に掲載〕

図2●モチベーション向上の要
モチベーションを高める方法はさまざまだが,共通するのは,社員が自ら希望する仕事にチャレンジさせること。

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