カラフルな糸を使って衣類などを装飾する刺しゅう技術。写真の右上と左下にある黒い模様も,この刺しゅう技術を使って作製したものだ。ただしこれは,装飾を目的としたものではない。黒色の糸の正体は炭素繊維で,CFRP(炭素繊維強化樹脂)を成形する方法の一つであるRTM法のプリフォーム(中間基材)として使う。

 軽量化を目的に,自動車や航空機の部品などでの採用が広がっているCFRPだが,低コストかつ短時間で成形する方法の試行錯誤は続いている。写真のプリフォームを作製する技術も,そのニーズに応えるために開発されたものだ。

 さて,刺しゅう技術を応用することで低コスト化できるのはなぜか?

〔以下,日経ものづくり2009年4月号に掲載〕