試験の種類と問題点

 上述したようにICの信頼度は,ICが生まれ使用されるまでの生涯管理に依存しており,試験だけではとうてい保証できない。例えは,メーカーは,デバイス設計,工程の審査,認定,部品材料の検査と管理,工程管理,品質認定,スクリーニング,出荷検査,ロット保証試験,信頼性試験などをする必要がある。これに対しユーザー側の認定,受け入れ検査,スクリーニング,さらにフィールド・データ解析,工程不良および故障解析などの有機的運用が不可欠となる1),2)

 この中で信頼性から見て重要なのは,工程および完成品に対するスクリーニング(通常全数検査,破壊試検の場合は抜き取り検査),ロットごと品質確認検査(主として外観,特性などを見る),信頼性試験(環境試験と寿命試験から成る抜き取り検査)である(表2)1),2),7),10)。信頼性試験という言葉はごく一般的に使うと,研究的な目的で行われる寿命実験などを指す場合もあるが,ここでいう試験は,業務的な試験仕様通りの検査である。通常,経済的な理由からロットごとでなく定期に実施される。特にユーザーの要求などでロット保証に使われる場合もある。

表2 信頼性保証試験の例
表2 信頼性保証試験の例
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 表2に示した信頼性試験の例2),7)ではLTPD(Lot Tolerance Percent Defective=ロット許可不良率),LTFR (Lot Tolerance Failure Rate=ロット許容故障)という指標が使われている(いずれも『言葉の説明』参照)。これらは,試験されたロットの不良率あるいは故障率がそれぞれLTPD(20%),LTFR (20%/103時間)より少ないということを90%の確かさ(これを信頼性水準,Confidence Level 90%と呼ぶ。『言葉の説明』を参照)で保証するということを意味している。故障がランダムに起こると仮定すると,これを実証するには,n=23個のサンプルを500時間試験して無故障であれは,試験に合格である(JIS C 5003 「電子部品の故障率試験法」参照)。

 この表の高温動作寿命試験は,普通の使用条件から見れば,かなりの寿命加速になっており,もし主要な故障メカニズムに対し100倍の加速係数を仮定すれば,500時間×100=5万時間にわたり,故障率は(20%/103時間)/100=0.2%/103時間=2,000FIT以下であることを保証することになる。しかし,実際のメカニズムは多岐にわたり,同一加速係数を仮定できない。試験では,実際に起こりにくい故障も発生する。ともかく,このような1回限りの試験で実証できる故障率は,実際の故障率よりはるかに大きい。このような試験データを長期にわたって累積するか,フィールド・データによって平均的な故障率を実証せざるを得ない。