新商品の企画・開発でユーザーの声を参考にする取り組みが,この2~3年で大きく変化し始めている。従来のアンケート調査やグループ・インタビューに加え,インターネットの消費者コミュニティーなどで不特定多数のユーザーの“集合知”を活用しやすくなったからだ。

 既存商品への改良要求や,メーカー側から一方的にユーザーに投げ掛けた新しい商品や機能のアイデアに対する回答だけでなく,ユーザー自身が発想した多様なアイデアのタネを吸い上げる。これまで企業内に閉じていた企画・開発プロセスに踏み込んでユーザーの意見を得る取り組みが活発だ。ユーザーが製品開発チームと一体となって新商品を生み出す動きが広がりつつある。

ビジネスSNSで文具のアイデア募集

 「インターネットのコミュニティーを活用することで,従来のアンケート調査より開発に参加する消費者の母数を格段に増やすことができた。継続的に将来ユーザーになり得る消費者とコミュニケーションを取れる点も大きな利点だ」

 文具大手のコクヨの研究開発部門,RDIセンターでチーフビジネスプランナーを務める万木康史氏は,新商品開発でインターネットのコミュニティーを活用することへの期待をこう話す。

 同社は2008年4月,ネット接続大手のニフティと組み,ユーザー参加型の商品開発プロジェクト「ビジネスアイテム研究室」を立ち上げた。ニフティのビジネスパーソン向けSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)「ビジネススペース」を活用。SNS内に立ち上げたコミュニティーで会員からアイデアを募り,商品化に向けた議論を進める取り組みである。

図1 コクヨとニフティがビジネスSNSで立ち上げたユーザー参加型の商品開発コミュニティー「ビジネスアイテム研究室」
図1 コクヨとニフティがビジネスSNSで立ち上げたユーザー参加型の商品開発コミュニティー「ビジネスアイテム研究室」
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 同SNSは無料サービスで,約1万6000人の登録者を抱える。大手SNSに比べると会員数はだいぶ見劣りするが,「荒らし」と呼ばれるいたずら行為を防ぐため,登録の際に事前にクレジットカード情報の登録を義務付けている。「真剣にコミュニティーに参加する質の高いユーザーが利用している」(ニフティ)ことが売りだ。