高橋 和渡
リニアテクノロジー

機器開発者にとっておなじみで,定番の電源ICであるリニア・レギュレータ(3端子レギュレータ)。その基本設計を大きく変えた「LT3080」を,Linear Technology社が2007年に出荷した。1V以下の低電圧出力,並列接続による大電流化という利点がなぜ得られるのか,どのようにしてその回路を生み出したのか。回路構成,動作と使い方,開発の経緯,発明者の言葉を通して,リニア・レギュレータの新しい流れを解説する。(本誌)

リニア・レギュレータ(3端子レギュレータ)の基本設計を変更

 携帯電話機,パソコン,ゲーム機,事務機器,自動車…。出力電圧可変型リニア・レギュレータ(3端子レギュレータ)は,至る所に搭載されている。電子機器内の電源電圧は多様になったが,リニア・レギュレータを使えば所望の電圧を手軽に得られるため,機器開発者にとってなじみ深い部品と言えるだろう。

 当社は,リニア・レギュレータの出力電圧を安定化するフィードバック回路の基準として,従来の定電圧源ではなく新たに定電流源を採用したIC 「LT3080」を,2007年に製品化した。1976年に3端子の出力電圧可変型リニア・レギュレータが世に出て以来踏襲されてきた基本設計(アーキテクチャ)を,30年ぶりに変更したことになる注1)。0Vからの低電圧を出力でき,並列接続によって供給する電流を容易に増やすことができるといった特徴がある。

『日経エレクトロニクス』2009年3月23日号より一部掲載