【特集】ホンダの秘密

世界同時不況のあおりを受け,日本メーカーは軒並み失速。今こそイノベーションが必要ではないだろうか。もちろん,イノベーションを生み出すことは難しい。その中でも着実に成果を出しているのが,ホンダだ。ハイブリッド車や燃料電池車など本業はもちろん,人間型ロボット,小型ジェット機,太陽電池,バイオエタノール,歩行アシスト装置など,実用化またはその一歩手前まで迫る新しい製品を多く有している。ホンダではなぜそれが可能なのか。その秘密に迫る。(近岡 裕,高田憲一)


【特集】ホンダの秘密

 「GMやトヨタのことなんか聞いてねえ。ホンダが将来の安全性の方向を決めるときに,相対価値なんてくだらねえんだよ!」。
 後にホンダ3代目の社長に就任する,当時ホンダ専務の久米是志氏が激高して叫んだ。同氏の怒りは収まらず,直立不動となった技術者に怒声を浴びせ続けた。(以下,「日経ものづくり」2009年3月号に掲載)

図●「SRSエアバッグシステム」
図●「SRSエアバッグシステム」

【特集】ホンダの秘密

 「2階に上げられてはしごを外された上に,床に火まで放たれた。もう, (目標に向かって)登っていくしかなかった」。ホンダが2009年2月6日に発売した新型のハイブリッド車「インサイト」。その開発責任者を務める,本田技術研究所四輪開発センターLPL(ラージ・プロジェクト・リーダー)主任研究員の関康成氏は,開発に着手する際にホンダ社長の福井威夫氏から受けたプレッシャーをこう語る(図)。(以下,「日経ものづくり」2009年3月号に掲載)

図●ハイブリッド車「インサイト」と本田技術研究所の関康成氏
図●ハイブリッド車「インサイト」と本田技術研究所の関康成氏

【特集】ホンダの秘密

───ホンダは新しい製品や技術を次々と生み出している。なぜ,そうしたことが可能なのか。
 高いターゲットを掲げるからだろう。イノベーションの成功率について「99%の失敗,1%の成功」などとよく言われる。もちろん,お客様に商品を提供する商品開発の領域では,失敗は許されない。しかし,もっと上流の部分,すなわち基礎研究開発の領域では,ホンダでも決して成功率が高いとは言えない。これは逆に言えば,99%が失敗するほどターゲットを高く設定するということだ。(以下,「日経ものづくり」2009年3月号に掲載)