「とても需要に追い付かないぞ」

 2002年夏。島津製作所は悲鳴を上げていた。蛍光X線分析装置を生産する厚木工場(神奈川県)の生産能力を3倍に引き上げた。それでも,すべての注文をこなすには到底,足りなかった。同社が開催した化学物質の分析方法などを紹介する説明会も,来場者であふれ返った。1回70人の定員で2回実施する予定だったが,急遽,説明会を追加する羽目になった。

 島津製作所だけでなく,分析業界全体が,目の前で起きている予想だにしなかった異変に戸惑っていた。「正直,手に負えない状況だ」。ICP-AES装置を利用した化学物質の定量分析を取り扱う分析センターの営業担当者は,急増する問い合わせに疲れを隠せなかった。