2001年11月。極寒のノルウェー・オスロ。日本からの出張で,この地を訪れていたソニーの冨田秀実(当時は社会環境部 環境戦略室 室長,現・CSR部 統括部長)はなぜか,日本,そしてオランダとの電話のやり取りに追われていた。

 冨田がわざわざこの地に出張した本来の目的は,数日にわたってオスロで実施される会議への出席だった。しかし,冨田はその会議への参加を途中で取りやめ,理由を周囲には告げず,そそくさとオランダに向かった。

「何があったのだろう…」

 冨田と共にオスロでの会議に参加していたキヤノンの古田清人(当時は生産本部 環境技術センター 課長,現・環境本部 環境企画センター センター所長)は,冨田の不可解な行動に,ただならぬ気配を感じていた─。