【特集】しなやか作戦 ~逆風のいなし方~

製造業全体が自信を失いかけている中で,淡々とヒットを飛ばしている企業がある。背伸びも無理もすることなく,自然体で開発した製品が,顧客の支持を受けている。嵐に力ずくで立ち向かうというより,しなやかに「いなす」かのように見える。逆風は,どこでも同じように吹いているのではない。意外に近いところに,逆風の来ない所があるのではないか。技術的蓄積と顧客とのつながりこそが,そこを見つけ出す手掛かりになる。 (中山 力,木崎健太郎,高野 敦)

【特集】Part 1  作戦計画

今回の不況は超大型だというだけでなく,製造業にとっての市場が大きく変化していることを顕在化させ始めた。つまり,その中にあっても好調な企業は,新しい市場の風をいち早くとらえた企業なのだ。特別なことをしているわけではない。ものづくりの基本に立ち返り,不況を無理に押し返そうとせず,負の風圧をまともに受けない所に立っている。(以下,「日経ものづくり」2009年2月号に掲載)

 

図●不況をいなす
図●不況をいなす
じっと耐えるという選択肢はおそらく難しい。自らの姿勢や向きを変えて,不況をいなすことを考えたい。

【特集】Part 2  先見性でいなす

どんなに高機能化や低価格化の取り組みを進めても,それだけで不況という逆風はかわし切れない。1社の取引先から同じ仕事を受け続けることも,その取引先と命運を共にすることにほかならない。逆風をいなすには,常に将来を見据えて自らの足元を見直し続けることが必要だ。そこで求められるのが,顧客の役に立てるはずだという信念に基づいて,未来のニーズを狙い撃ちすることである。(以下,「日経ものづくり」2009年2月号に掲載)

 

図●アイ・シー・アイデザイン研究所のペットボトル用飲み口「Kiss  II」
図●アイ・シー・アイデザイン研究所のペットボトル用飲み口「Kiss II」
ペットボトルを横にしても飲料は漏れないが,口を付けると飲料を飲むことができる。

【特集】Part 3  先見性でいなす

売れる製品とは何か,拡大する市場はどこか─。それが明らかになるタイミングを予測するのは難しく,また,急激にニーズが高まることもしばしば。そこで重要となるのが,新製品をタイムリーに投入できる身軽さだ。有望製品となりそうな新しい分野に目を光らせ,他社に先んじて技術開発を進めておく。そして,ニーズが確認できたら即座に製品化し,市場に投入するのだ。(以下,「日経ものづくり」2009年2月号に掲載)

 

図●ファインモールドの「ナノ・ドレッドシリーズ」
図●ファインモールドの「ナノ・ドレッドシリーズ」
第1弾の「九六式25mm機銃(単装・2連装)」。冷却フィンの厚さは0.06mm。

【特集】Part 4  バランスでいなす

新しい市場を開拓したいが,ある程度大きな需要が見込めないと取り組みにくい,と考える技術者は多いだろう。特に大企業において,この傾向が強いはずだ。しかし,既存の事業領域との関連性が強ければリスクを小さくできる。そこで求められるのは,既存市場の周囲で新市場への突破口を見つける先見性と,既存技術を生かしながら他社に先んじて新技術を実用化できる身軽さだ。(以下,「日経ものづくり」2009年2月号に掲載)

 

図●リサイクル材100%の基材を採用した「Eフロアー」
図●リサイクル材100%の基材を採用した「Eフロアー」
建築廃材などを2種類の大きさに破砕し,耐水性を持つバインダで固めた厚さ12mmの木質ボードを「基材」(写真下)として使う。基材の表面に「突き板」を張り付けて塗装し,裏面に防水シートを張り付けると「床材」(写真上)が完成する。