第1部<カネか技術か>
岐路に立つ先端半導体
寡占化加速か,2番手巻き返しか

 マイクロプロセサ,NANDフラッシュ・メモリ,DRAMなどの最先端半導体の分野で,最大手メーカーと2番手以下のメーカーの間で競争力の差が広がり始めている。金融危機による需要減退と投資負担の急増がメーカー間の体力勝負の度合いを強めているからだ。最大手メーカーは今後も圧倒的な量産規模で2番手以降の企業のシェアを奪う構えだ。対する2番手以下のメーカーは巻き返しに向け,革新技術や新たな提携手法を導入する。機器メーカーが待望する「明確な2番手」が生まれるか,剣が峰に差し掛かった。

第2部<エルピーダメモリの戦略>
脱DRAM専業メーカーへ邁進
ファウンドリーや貫通電極で開拓

「不況が終わった後に,どのような姿になって帰ってくるかが重要。社内に暗い空気はない」。DRAM大手のエルピーダメモリが,2010年以降の復活に向けて新戦略を打ち出した。これまで同社はDRAM専業会社として,微細化の先行と生産能力の拡大に努めてきた。今後同社は,脱DRAM専業会社への道を進む。まずはファウンドリー事業を大規模に手掛ける。これと並行して,システムを丸ごとのみ込む可能性を持つSi貫通電極(TSV)技術を積極展開する。業界に先駆け,TSVの生産ラインを2009年初頭に稼働させる方針だ。

第3部<多様化の事例>
常識外れの発想を力に
他社と同じことはしない

 常識破りのアイデアで半導体の新たな付加価値を提供する─。先端プロセスへの投資負担が急増していることを背景に,半導体が持つ微細化以外の可能性を生かそうとするメーカーが増えてきた。新材料によってケタ違いの高性能化を実現する技術や,誰も思い付かなかった用途に半導体を応用する試みなどが続々と登場している。こうした取り組みの中にこそ,機器を差異化するヒントが転がっている。

第4部<ISSCCプレビュー>
半導体業界の動きを反映
微細化に頼らない技術も

 不況の中で変革期を迎えた半導体業界の姿は,最新の回路技術が発表される国際会議「ISSCC 2009」からも読み取れる。景気後退の影響から,採択論文数が例年に比べて10%ほど減少したほか,CMOSの微細化を積極的に推し進める発表が,ごく一部のメーカーに限られてきた。その分,微細化に頼らずに高集積化・低コスト化を進める技術や,医療/エネルギーといった新分野への展開を目指した技術発表が目立つ。