【解説】レーザ溶接の応用拡大を妨げる日本の特殊性

異なる厚さの鋼板をレーザ溶接などで接合して一体化し、部品点数や質量の削減につなげるテーラード・ブランク鋼板。欧米ではもちろん、最近では中国、インドなどでも採用が拡大しているのに対し、日本ではむしろ採用が停滞している。世界の潮流に、なぜ日本だけが取り残されるのか。内製にこだわる自前主義に、その原因があると筆者は分析する(本誌)。

スーテック・ジャパン社長
石原弘一

 CO2(二酸化炭素)削減に対する世界的な関心が高まっている。例えば欧州では2012年までに新車1台当たりのCO2排出量を、企業平均で130g/km以下に抑えることが求められているが、すでに2012年を待たず、各国でこの基準値を上回る車両については「課金」する税制が各国で導入されつつある。
 しかもこの金額は、数年後にはさらに増額される予定であり、自動車メーカー各社はCO2排出量を削減するべく、車体の軽量化のために、様々な試みを行っている。一方で、米国に端を発する世界的な金融危機が実体経済に波及し、自動車販売の急激な悪化に対応して、作り手側としてはさらなるコスト削減が求められている。

TB鋼板を使った車体部品の例
TB鋼板を使った車体部品の例
欧州車のフロア補強材。欧州では1車種に10以上のTB鋼板部品を使った例も登場している。