【直言】Henry Fordは逆転の発想で 「解体」を「生産」に応用した

 自動車王Henry Ford氏は「食肉工場を見て,流れ作業による自動車の大量生産方式を思い付いた」という話を聞いたことがある。後につくられた“伝説”なのかもしれないが,米国の当時の食肉工場を撮影した映像を見ると,確かに牛肉がチェーン式コンベヤにつるされ,流れ作業をしている。洗浄後に皮をはがされた牛肉は,背骨から左右対称に切り分けられてステーキやソーセージといった用途に合わせて,部位ごとに解体されていく。全くムダを出さないプロセスである。
 ものづくりというと,多数の部品を組み立てて完成品に近づけていくプロセスを連想するが,この食肉工場の例を聞くと,逆に解体することで付加価値を生むという発想のものづくりがあってもいい。(以下,「日経ものづくり」2008年12月号に掲載)

山際康之
やまぎわ・やすゆき
1960年東京都生まれ。東京大学で工学博士号を取得。ソニー入社後,「ウォークマン」の設計などを経て,環境グローバルヘッドオフィス部長。2005年4月から現職に就く。著書に『組立性・分解性工学』『サステナブルデザイン』など。