2011年7月の地上デジタル放送への完全移行後も既存のアナログ・テレビを利用可能にする,「外付け型の単体チューナー」が製品化されている。そのうちの簡易版製品の価格が,「いずれ5000円に下がる」という話を聞いたことがあるかもしれない。

 きっかけは,総務大臣の諮問機関である情報通信審議会が2007年8月に公表した「地上デジタル放送の利活用の在り方と普及に向けて行政の果たすべき役割」の第4次中間答申だった。この中で「5000円以下の簡易なチューナーを2年以内に実現する」ことが提言された。これをマスコミが大々的に報道し,「5000円」という数字が独り歩きを始めた。

 2008年6月27日に公表された第5次中間答申も,5000円以下の簡易チューナーの実現目標を「来年(2009年)夏まで」と具体的に記述している。こうしてまだ存在しない「5000円の簡易チューナー」は,すっかり既定の事実になってしまった。