【特集】失敗・危機は成功の母

 転んでもただでは起きない─。重大な失敗・危機に直面して必死の努力を続けている人たちがいる。信頼回復のために全社改革を断行し,ものづくりを強化する。それを競争力の向上につなげていく。三菱重工業は2002年10月の客船火災,日立製作所は2006年6月の原発タービン事故に直面した。キヤノン電子は製品不良率の高止まりに悩まされ,リコーは2000年ごろ,製品開発や品質評価の手法に行き詰まった。渦中に立たされた人たちは,こうした失敗・危機をいかにして成功の母に変えたのか─。(以下,「日経ものづくり」2008年10月号に掲載)


【特集】失敗・危機からの飛躍1 三菱重工業

 「会議や報告,他部署との調整が多すぎて,本来の業務に時間が取れない」「ベテラン技術者がごっそりと退職してしまったのに,それに代わる若手が育っていない」「ルールやマニュアルはあふれているくせに,内容は業務実態と合っていない」─。
 事件・事故が起きた背景に何があるのか。現場に潜む不満や問題点を暴き出し,手を打たなければ再発は避けられない。そう考えた三菱重工業は,客船火災直後の2002年11月, 「現場管理改革委員会」を設置した(図)。同委員会は早速,現場の課長や係長に対してアンケート調査などを実施。聞こえてきたのが冒頭の本音だ。(以下,「日経ものづくり」2008年10月号に掲載)

図●すべては生産現場の改革から始まった
図●すべては生産現場の改革から始まった


【特集】失敗・危機からの飛躍2 キヤノン電子

 キヤノン電子に忍び寄っていた危機。それは,大きな事故や不祥事などではなかった。まるでメタボリック症候群がもたらす生活習慣病のように,ひそかに進行して社内を疲弊させる危機である。その深刻さは,不良率の高さに現れていた。(以下,「日経ものづくり」2008年10月号に掲載)

図●不良率を激減させた失敗・成功事例集
図●不良率を激減させた失敗・成功事例集


【特集】失敗・危機からの飛躍3 リコー

 ちょうど世紀をまたぐ2000年ごろ。カラー複写機の上級機種の製品化を進めるリコーの開発陣は,どんよりと重苦しい空気に包まれていた。
 当時,上級機種をカラー印刷機の代わりに用いて小部数の冊子を作るサービスが登場していた。複写機で作る冊子とはいえ,売り物である以上,色合いなどの品質管理が非常に重要である。開発陣としては,このニーズに応えなくてはならないのだが,コピー開始後,1枚目と1000枚目で同じ色合いを保つという課題をなかなかクリアできない。(以下,「日経ものづくり」2008年10月号に掲載)

図●ポリゴンミラー駆動用モータの役割
図●ポリゴンミラー駆動用モータの役割


【特集】失敗・危機からの飛躍4 日立製作所

 2006年6月15日に起きた中部電力浜岡原子力発電所の日立製作所製タービン破損事故を契機に,同社が打ち出したのが「事故の再発防止」と「ものづくりの基礎体力の強化」である(図)。この二つを連携させながら,事故で失墜した日立の技術力の信頼回復を目指す。(以下,「日経ものづくり」2008年10月号に掲載)

図●「基礎強化」と「再発防止」が二本柱
図●「基礎強化」と「再発防止」が二本柱


【特集】失敗・危機の教訓

 ものづくりを取り巻く環境が大きく変化している(図)。この変化が,さまざまな失敗のリスクを高める。
 例えば,生産現場を支える人材の変化。キヤノン電子は,正社員だけで構成する生産現場と派遣社員がメインの生産現場で,生産性の比較を続けている。「現状を5年前に比べると,正社員だけから成る現場の生産性は2倍に向上したのに対し,派遣社員主体の現場の生産性は1/2に低下してしまった」(同 社代表取締役社長の酒巻久氏)。(以下,「日経ものづくり」2008年10月号に掲載)

図●ものづくりの大変化が失敗のリスクを高める
図●ものづくりの大変化が失敗のリスクを高める