【私が考えるものづくり】永守 重信 日本電産 代表取締役 社長 素材高騰はチャンスだ

 仕事というのは「実業」「虚業」「悪業」と3ランクに分かれるそうだけど(笑),やはり実業ですよ。僕は農家の出身で,小さいころから田植えや畑仕事を手伝って,作物ができていくプロセスを肌で感じてきた。父や母から「あぶく銭を稼ぐようなことはいかん」と教えられて育ったから,当然のようにものづくりの世界に入り,つくる会社も最初から製造業と決めていた。生まれたときから,働くということは即,ものづくりだったんです。
 我が社の社是には「科学・技術・技能の一体化」という一節が真っ先に出てくる。科学と技術って書く会社はたくさんあるけど,技能も同列に書いている会社はないね。もちろん科学も技術も非常に大事だけど,それだけでは,ものづくりで世界一になれない。日本を強くしたのは技能であって,そこが原点なわけ。でも最近,その技能が弱ってきている。(以下,「日経ものづくり」2008年7月号に掲載)