2010年度の実用化を掲げた,無線を使った安全運転支援システムに暗雲が立ち込めている。5.8GHz帯に加えて新たに700MHz帯が登場し,用いる通信メディアが決まらないからだ。この状況を受けて,システム実用化のスタートとなる路側機の設置が遅れそうだ。けれども,あきらめるのはまだ早い。2010年度には,路側機の設置に頼らない車車間通信から始めるという選択肢がある。

 見えにくい周囲の自動車や歩行者の位置をつかみ,衝突や追突などの交通事故を未然に防ぐという,世界一安全な交通社会を目指すITS(intelligent transport systems)の雲行きが怪しい。ここでいうITSとは,2010年度から始めようとしていた,無線通信を利用した安全運転支援システムのこと。このシステムを実用化する上でカギを握る,周辺状況の伝達に必要な通信メディアが決まらないのだ。通信メディアが決まらなければ,システムで用いる車載器の開発は進まない。