【連載講座】軽く安くする材料・加工技術

ショットを使わない
ピーニング

ショットピーニングは自動車部品では定番の表面処理法である。東北大学は、キャビテーションという、機械の世界では嫌われる現象を利用して、ショットピーニングに代わる工程を提案した。ショットピーニングよりも疲労強さを高められ、装置も簡便で済む。

東北大学大学院工学研究科ナノメカニクス専攻
 材料メカニクス講座 知的計測評価学分野 教授
祖山 均


 機械、特に流体機械にとってキャビテーションは“悪役”である。船のスクリュでキャビテーションが起きると、スクリュが消えてなくなってしまうほど激しく壊食(エロージョン)することがある。泡が発生し、続いてマイクロ秒のオーダーで泡が壊れる時に生じる衝撃力が、材料を傷める。設計者、研究者は、キャビテーションをなくすことに長い間力を注いできた。
 一方のショットピーニング(SP)は自動車部品の表面処理に欠かせない工程である。ショットと呼ぶ、金属やガラスの小片をワークにぶつけ、表面近傍に圧縮の残留応力を与えて疲労強さを高める。ただし、やり過ぎれば表面が荒れる。またショットを回収し、使えるものだけを選んで再利用するためのプラントが必要になるなど、手間のかかる工程でもある。

【連載講座】軽く安くする材料・加工技術
各種のキャビテーション噴流