【直言】「正規従業員」「 全量国内生産」、デニムのカイハラから何を学ぶか

 筆者は生産管理・技術管理が専門なので,工場には頻繁に行く。2008年2月初めのある日,広島県山中に,ジーンズ生地の雄,カイハラを訪ねた。従業員765人。貝原良治会長は,秘書も運転手もなく,携帯にかければ会長が出る。三つの主力工場はジーンズを履いた会長の運転で見て回る。
 ここは備後絣の産地。藍の先染めだ。カイハラは1893年創業。先達は,藍染め作業の省力機械や自動緯糸括り機を考案し地域に広めたが,1960年代以降,農業人口は減少,野良着からの転換を模索する。高級着物地や中東向けサロン地などさまざま試すが長く続かず,会社も危なくなる。(以下,「日経ものづくり」2008年4月号に掲載)

藤本 隆宏
ふじもと・たかひろ
1979 年 東京大学経済学部を卒業後,三菱総合研究所に入社。米Harvard University研究員,東京大学経済学部助教授,同教授などを経て2004年から現職。『ものづくり経営学─製造業を超える生産思想』(光文社)など著書多数。