【特集】現場力を高めるトヨタの三つの「エンジン」

2012 年に世界生産台数を1130万台に引き上げる計画を明らかにし,世界トップの座を強固にするトヨタ自動車。持続的な成長を続ける同社の手法に,多くの日本企業が熱い視線を送っている。外部の人間には見えにくいが,トヨタ自動車や同社グループ関係者,O B などの声を丹念に拾っていくと,トヨタ自動車の現場力向上を後押しする仕掛け,すなわち三つの「エンジン」が見えてくる。(近岡 裕)

【特集】現場力を高めるトヨタの三つの「エンジン」/エンジン1 製造部門の仕掛け

 今や日本の「グローバル・エクセレント・カンパニー」の筆頭に名前が挙がるトヨタ自動車。多くのメーカーからの注目を一身に集めている。トヨタ自動車の手法を知り,それを学んで自社の競争力を高めたいという思いが,その背景にある。  一方で,時折こんな声も聞こえてくる。「トヨタ自動車は凄すぎる。当社にはとても参考にならない」─。学ぼうという気持ちはあるものの,トヨタ自動車の巨額な売上高と利益を前に,気圧されてしまう日本メーカーも少なくないのだ。トヨタ自動車は“遠い存在”なのか。(以下,「日経ものづくり」2008年4月号に掲載)

図●トヨタ自動車の競争力の「エンジン」
図●トヨタ自動車の競争力の「エンジン」

【特集】現場力を高めるトヨタの三つの「エンジン」/エンジン2 海外工場の仕掛け

 生産の逆転が起きた」─。横浜市内で開催された講演会でトヨタ自動車常務役員堤・高岡工場長の藤岡高広氏は,こう語った。講演のテーマは「海外生産拠点での自立化について」である。
 2007年にトヨタ自動車は大きな転機を迎えた。クルマの生産台数において,海外が初めて日本を追い越したのである。同社の同年の世界生産台数は854万台。内訳は,海外生産が431万台で,日本生産が423万台。海外生産が8万台上回った。(以下,「日経ものづくり」2008年4月号に掲載)

図●トヨタ自動車の英国工場(TMUK)
図●トヨタ自動車の英国工場(TMUK)

【特集】現場力を高めるトヨタの三つの「エンジン」/エンジン3 管理能力の仕掛け

 会社側がコミットメント(必達目標)を要求し,管理者にその達成責任を持たせる。コミットメントを実現した管理者は昇進し,そうではない管理者はポストを次の人に譲る。常に少数のエリート人材を探し求め,その人材に会社を牽引させる。米国流の厳しい成果主義に右へ倣えするかのように,こうしたやり方をまねる日本企業も少なくない。(以下,「日経ものづくり」2008年4月号に掲載)

図●方針管理
図●方針管理