【直言】取引関係が“メッシュ化”へ 個性が光る中小企業に期待

 1990年代には米国や英国を手本にした脱工業化論が花盛りで,今後はサービス産業や情報産業,金融業などが日本経済を支えるという論調が主流だった。そんな逆風の中,製造業は歯を食い縛ってモノづくりにとどまった。ただ守りに回っていただけではない。新技術や高品質の製品を送り出し,景気回復をけん引したのである。
 今回の景気回復では,モノづくりの基盤を支えている中小企業の貢献が特に大きいと思っている。利益は大手企業にとどまり,中小企業には及んでいないと報道されているが,景気回復の過程で企業間取引の構造が変化したことで,中小企業は大きなチャンスをつかもうとしている。(以下,「日経ものづくり」2008年3月号に掲載)

ときわ・ふみかつ
ときわ・ふみかつ
1957年に東京理科大学・理学部化学科を卒業,花王に入社。米Stanford University留学,理学博士取得(大阪大学),研究所長,取締役を経て,1990年に社長,1997年に会長。『モノづくりのこころ』『反経営学の経営』(共著)など著書多数。