【詳報・事故は語る】三菱化学プラント火災事故

 2007年12月21日,三菱化学鹿島事業所の第2エチレンプラントで火災事故が発生した。火元は,ナフサをエチレンに分解するための炉(分解炉)。分解ガス冷却用のオイルが配管から漏れ,何らかの理由で着火,半日近くにわたって燃え続けた。
 当時,火元の分解炉はメンテナンス中だった。事故が発生したのは,ほぼすべての作業が終わり,分解炉を通常稼働に復帰させる直前である。
 この事故で4人が死亡した。うち2人は復帰作業の担当者。残り2人は火元の下層階で別の作業に当たっていて逃げ遅れたとみられる。
 本稿では,同社が経済産業省原子力安全・保安院に提出した報告書や,労働安全衛生に詳しい複数の技術者による見解を基に,事故の背景や原因を推察していく。(以下,「日経ものづくり」2008年2月号に掲載)

図●エチレンプラントの分解工程
図●エチレンプラントの分解工程
水蒸気希釈した原料ナフサをエチレンに熱分解する(原料がナフサの場合,副生成物としてメタンなどの炭化水素,水素も得られる)。次に,分解ガスの2次反応を防ぐため,急冷却する(1次冷却)。最後に,分解ガスにクエンチオイルを直接噴霧し,分解ガスをさらに冷却する(2次冷却)。三菱化学の資料を基に本誌が作成した。