【私が考えるものづくり】カミオカンデが設計を鍛えた

 現場に行かない設計者なんて,そんなのダメだよ。カミオカンデ(KamiokaNDE)を例にしてその話をしましょうか。
 カミオカンデは陽子の崩壊やニュートリノを観測するための実験施設です。ここでの観測成果が2002年のノーベル賞受賞につながりました。
 カミオカンデは岐阜県の神岡鉱山の中に3000tの水をため,その水の中にたくさんある陽子が崩壊したり,宇宙から来るニュートリノが水中の電子に衝突したりするときに発する光を,周囲に配置した光電子増倍管で捕まえる,という仕組みです。

現場を見て,さらに体感する
 原理はシンプルですが,実験というのは何が起こるか分からない。例えば水。カミオカンデの水は世界一透明じゃないとだめです。光がちゃんと先まで届かないから。そして透明なだけでなく,光の雑音も低くないといけない。
 水はタンク上部のすき間などから少しずつ蒸発するので3日に1度ぐらい補充します。鉱山に湧き出る地下水はきれいに見えますが,そのままタンクに入れると,途端に光の雑音が増えてしまいます。放射性物質の気体であるラドンが原因です。(以下,「日経ものづくり」2008年2月号に掲載)