ソニーのテレビ,Googleのテレビ

 「『Googleのテレビ』って言われれば,何となくイメージがわくじゃないですか。いずれは『YouTube』でHDTV動画が無料で見られるとか。『ソニーのテレビ』って違いますよね。やっぱり奇麗とか薄いとか,そっちでしょう」。あるソニーの関係者はこう語る。彼の心中には,ソニーの将来に対する不安がある。これから5~10年後も,ソニーは強い会社でいられるのか。

<体制>
技術中心の開発を改め
まだ見ぬ体験を届ける

 デジタル家電から半導体,ソフトウエアまで。多くの企業が,ユーザーの実地調査に力を入れ始めている。これまでにない「体験」をユーザーにもたらすという観点から,新しい機器やサービスのヒントを探る動きである。背景には,技術を売り物にしても製品がヒットしない現実や,ネットワーク社会の進展がある。ただし,ユーザーの観察から発想を膨らませるだけでは,消費者をとりこにする製品は作れない。斬新なアイデアをサービスや機器に余すところなく生かすには,これまでとは異なる視点が求められる。ユーザーを導くビジョンや,複数の機器をまたがるソフトウエア基盤などが重要になる。

<手法>
日常行為の観察を通じて
隠れた要求を見つける

 多くの企業が民族誌学の手法を応用したユーザーの調査に乗り出している。従来の調査手法では発見が難しかった要求を見つけたり,開発グループの意見を統一したりできる。企業の戦略策定や新しい製品分野の探索から,個別の製品の改良まで幅広い目的で利用されている。最近では実際の製品につながった事例も出始めている。各社は,元々は学術的な調査方法を,事業目的に活用できるよう工夫を凝らす。実際の調査の方法や心得,結果の分析などについて各社の取り組みを紹介する。