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世界を救う異端のアイデア

田野倉 力
2007/12/27 14:28
 

【特集】世界を救う異端のアイデア

【総論】直面する二つの課題に技術革新で解決を支援

 2007年12月3日,くしくも同じ日に二つの「世界が直面する課題」に関する国際会議が幕を上げた。
 一つは,大分県別府市で開催された「第1回アジア・太平洋水サミット」。36の国・地域が参加し,水にまつわる諸問題を議論している。飲料水をはじめとする水の確保や水にかかわる災害の管理,水をめぐる安全保障の在り方などに関する方針が打ち出された。
 もう一つは,インドネシアのバリ島で開催された「気候変動枠組み条約第13回締約国会議(COP13)」である。地球温暖化の人為的原因として有力視されている温室効果ガスに関して,これまで足並みのそろっていなかった各国が2008年から「ポスト京都議定書」に向け削減目標の設定を議論すること(バリ・ロードマップ)に合意した。(以下,「日経ものづくり」2008年1月号に掲載)

【アイデア1】ゼネシス

 海洋温度差(温海水と冷海水の温度差)だけで発電と淡水化を同時に行える装置がある(図)。開発しているのは,ゼネシス(本社東京)という新興企業だ。
 電力と淡水が同時に手に入る,さらに化石燃料を使わずに済むということで,特に中東や東南アジアなどの関心が高い。発電と淡水化の機能は互いに独立しており,単体の装置としても使える。近年,特に淡水需要は増えているが,環境負荷が高いと存在意義が問われる。その点,海水で発電も可能というのは強みといえる。(以下,「日経ものづくり」2008年1月号に掲載)

図●発電と淡水化の機能を併せ持つ装置
図●発電と淡水化の機能を併せ持つ装置
海洋温度差(表層温海水と深層冷海水の温度差)を利用する。写真は,佐賀大学海洋エネルギー研究センター内に設置された装置。

【アイデア2】インクマックス×三菱鉛筆

 生地の染色に使う水の量を95%削減する─。2007年5月30日,クラボウは従来の常識を打ち破るような技術「GREENPLAN」を採用すると発表した。ユニフォームやカジュアル衣服向けの生地から適用する。初期のターゲットは「環境意識が高い欧州や米国のアパレル産業」(同社)。染色工程における水やエネルギの消費量が圧倒的に少ないことを武器に,販路の拡大を目指す。(以下,「日経ものづくり」2008年1月号に掲載)

図●一般的な捺染との比較
図●一般的な捺染との比較
新開発の染色法は,捺染の一種といえる。一般的な捺染と異なるのは,顔料の特性。新開発顔料は粒子が細かいため,繊維をムラなく「染められる」。三菱鉛筆の資料を基に本誌が作成した。

【アイデア3】MTI

 淡水の入った袋を海上に浮かべながらタグボートで輸送するという実験が,2007年に2度行われた(図)。舞台は,日本の太平洋沿岸。和歌山県新宮市の新宮港と徳島県阿南市の富岡港を結ぶ海域だ。
 何の変哲もない水をわざわざ輸送する理由とは何か。この実験は,経済産業省が主管している「平成18年度工業用水代替水源確保調査」の一部。つまり,水資源の豊富な地域からそうでない地域に向けて工業用水を輸送する可能性を探ることが,この実験の目的だった。(以下,「日経ものづくり」2008年1月号に掲載)

図●「水バッグ」を使った淡水輸送実験
図●「水バッグ」を使った淡水輸送実験
MTIが水資源機構と共同で実施した。和歌山県新宮市から徳島県阿南市まで1000tの淡水を運んだ。MTIが撮影。

【アイデア4】筑波大学

 現代の快適な生活を支えている電気。だが,石炭や天然ガスを使う発電所は温室効果ガスの主要な 排出源でもある。排出量を減らすには,化石燃料由来エネルギではなく,再生可能エネルギを利用する必要がある。
 さまざまな再生可能エネルギの中で確実に普及しているのが太陽電池だ。水力や風力などの再生可能エネルギと比べて,設置場所やスペースなどに制約がそれほどないのも特徴。分散型発電装置としての潜在性は高い。(以下,「日経ものづくり」2008年1月号に掲載)

図●量子ドット型太陽電池の構造
図●量子ドット型太陽電池の構造
量子ドット型には複数の種類がある。3次元超格子構造でマルチバンドを形成するものはその一つ。筑波大学の資料を基に本誌が作成した。3-5族半導体を使うのは,元素の組み合わせが豊富で改良しやすいという狙いもある。

【アイデア5】OKI×DAP

 OKI(沖電気工業)は,半導体事業での温室効果ガスの使用量や排出量を削減するため,新たな一手を打った。製造工程で使う温室効果ガスを回収・精製した上で新品のガスと混ぜて再使用するという。

“破壊力”抜群のガス

 半導体製造工程で使うガスは,地球温暖化係数(GWP:Global Warming Potential)が特に高いパー・フルオロ・コンパウンド(PFC)と呼ばれるものだ。(以下,「日経ものづくり」2008年1月号に掲載)

図●PFCガスの再使用フロー
図●PFCガスの再使用フロー
半導体製造装置から排出されたPFCを回収・精製。新品のガスと混合し,半導体製造装置で再び使用する。DAPの資料を基に本誌が作成した。

【アイデア6】4大学×4企業

 二酸化炭素(CO2)を原料とした全く新しい樹脂を開発しようというプロジェクトが進んでいる(図)。東京大学/慶応義塾大学/東京理科大学/金沢大学の4大学と,帝人/住友化学/住友精化/三菱商事の4企業の計8団体から成る大所帯のチームを結成。2012年までに基礎研究を終え,その後 の実用化を目指す。
 研究グループが想定している運用は,発電所や工場などの施設からCO2を回収・精製した上で化学プラントに輸送し,ほかの原料と共重合させるというもの。この過程で得られた樹脂は,粉末やペレットの形態で流通,最終的に包装材や構造材(成形品)へと姿を変える。(以下,「日経ものづくり」2008年1月号に掲載)

図●CO2原料樹脂の実用予想図
図●CO2原料樹脂の実用予想図
Co錯体触媒の下,プロピレンオキシドとCO2を交互共重合させると,主生成物として脂肪族ポリカーボネートを得られる。反応条件によって得られる脂肪族ポリカーボネートの種類(構造)が変わってくる。

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