【私が考えるものづくり】意味あるムダは許さなければ

 1910年に修理工場として創業した当時,モータをはじめ世の中の機械はたいてい海外のものでした。それを何とか国産化したいと創業者が考えて以来,お客様の要望を第一に考えるマーケット・インの思想は貫いていると思います。ただ,常に先進的でなければならない。マーケットができてからインしても遅いんです。

 お客様の要望は時代とともに変わります。以前の話で言えば,洗濯機なんて働く人や主婦の時間をものすごく節約しましたよね。あんなに使う人を楽にしたものはないんじゃないかと今でも思っていますけれども,じゃあ今,生活者の視点で何が欲しいかと聞いたときに,今さら家電にあこがれる人はほとんどいないでしょう。

 その時その時の生活者の思いに応えようとするなら,前もって種をまいておかなければなりません。残念ながら,ものづくりには時間がかかります。開発に10年単位の時間がかかることは多いですし,下手をすると25年もかかるようなものもあります。だからどんな方向に開発を進めるか,研究所には20年くらい前に言ってもらわなければ,ものはできないんです。(以下,「日経ものづくり」2008年1月号に掲載)