物を師とする生き方の勧め |
森 政弘●東京工業大学名誉教授 |
ロボットコンテスト(以下ロボコン)が大はやりである。現在,中学校のロボコンは全国で3000校以上が行っている。それらの結果を見てみると,どれもが単なる技術や創造性の教育だけではなく,人間形成,特に心の育成に絶大な効果が上がり,荒廃した教育困難な中学校が多い中で,ひときわ光彩を放っている。例えば,ロボコンを体験した中学生の感想文からほんの数行を拾ってみよう。
「僕は物を絶対に粗末にしたりできないだろう。今しきりに環境問題が叫ばれているが,もし全人類がロボコンのように素晴らしいことを体験し,何かに気が付いたとしたら,他人や物にも思いやりが持てるようになると思う」。彼は人生の重大意義に気付き,他人に対してはもちろん,物に対してまでも思いやりの心が芽生えたのである。(以下,「日経ものづくり」2007年12月号に掲載)
もり・まさひろ
1927年生まれ。1950年に名古
屋大学工学部電気学科を卒
業後,東京大学助教授,東京
工業大学教授を歴任。専門は
ロボット工学。ロボットコンテ
ストの生みの親としても有名。
『ロボコン博士のもの作り遊
論』など著書多数。
【「日経ものづくり」の年間購読および一冊購入の申し込み】
【定期購読者限定サービス(無料):記事検索/PDFダウンロード】