雑誌 特集

日本工場の挑戦

田野倉 力
2007/11/30 14:21
 
日経ものづくり 特集

 工場の作業負担軽減で品質とスピードの二兎を追うホンダ鈴鹿製作所。精密金型の内製化で車載 リレーの競争力を高める帯広松下電工。コマツ大阪工場は,工場の機能を拡大して全世界の部材の 調達からマーケティングまで責任を持つ。
 グローバル生産の拡大でほぼ全世界に工場を進出させた日本の製造業だが,最も頼りになるのは, やはり日本工場。戦略の発信基地へと進化する日本工場が,世界の中で疾走する。( 高田憲一,吉田 勝)



 2007年11月1日,ホンダのメアリズビル工場(米国オハイオ州)が 生産開始25周年を迎えた。
 メアリズビル工場が産声を上げた1980年代。「日本の輸出は集中豪雨。他国の産業を破壊している」と,欧米から激しい批判にさらされていた。その後,日米自動車摩擦の政治問題化や,産業界に塗炭の苦しみに巻き込んだ円高がやって来た。これらに対応するため,日本の製造業は輸出一辺倒からグローバル生産へと大きく舵を切る。さらに,ASEAN諸国や東欧諸国の発展,中国の躍進,ブラジル・ロシア・インドなど新興国の成長など,今日まで経済環境の激変が続いた。
 こうした中,日本の製造業が一貫して進めたのがグローバル生産の加速だった。これを人と技術で支えたのが日本工場である。(以下,「日経ものづくり」2007年12月号に掲載


ホンダ鈴鹿製作所の組み立てライン
「フィット」や「シビック」などを生産。海外工場の量産立 ち上げも支援する。また,生産技術やノウハウを生み出 す役割を担う。



 ホンダが2007年10月26日に発売した新型「フィット」が快走している。同社発表によると,同年11月8日までに約2万台を受注,2週間で月間販売計画数1万2000台の1.7倍に達した。
 2代目に当たる今回のフィットは初代とは異なり,最初からグローバルカーとして開発されたものだ。どこの海外工場で,いつから量産を始めるかは未公表だが,1年以内に海外生産を立ち上げるとしている。(以下,「日経ものづくり」2007年12月号に掲載


図●シリンダブロックへの治具取り付け作業を自動化
シリンダブロックは自動的に生産ラインに投入され治具が組み込まれる。このほかの工程でも,新しいエンジン組み立てラインは大幅に自動化を進めている。



 国内外に44拠点の工場を有するコマツ。同社は,その中でも「製品・生産技術の開発機能を備えるものをマザー工場と定義している」(同社生産本部大阪工場長の佐々木一郎氏)。これに該当するのは,国内4拠点,国外6拠点の計10拠点。中・大型の建設機械を生産する大阪工場もその一つだ。建設機械の製品および生産技術の開発を担う同工場は,英国,米国,中国などにチャイルド工場を有している。(以下,「日経ものづくり」2007年12月号に掲載


図●大阪工場のショベルカー組み立てライン
旋回部分の土台となるレボフレームの組立ライン。



 NTN取締役会長の鈴木泰信氏は「三重製作所がNTNの最先端工場」と胸を張る。2004年4月に設立された同製作所をベアリング製造の「モデル工場」と位置付けており,他のベアリング工場をけん引するべく,品質面でもコスト面でも海外拠点に負けない新しい生産ラインづくりを進めている。
 同社発祥の地である桑名製作所と同じく産業用ベアリングを中心に生産する工場で,月に350万個以上を生産する。鉄道,航空機,医療機器など幅広い用途と環境で使われる産業用ベアリングは,自動車用に比べてさらに高い品質が求められるだけに「ベアリング製造のすべての技術や機能が集約されている」(同氏)(以下,「日経ものづくり」2007年12月号に掲載


図●超大型軸受け用の熱処理設備
炉床にローラコンベヤを備え,連続加熱するローラハース炉。直径1m以上の内/外輪を焼き入れできる。



 「600人の従業員がいるが,松下電工からの出向者は2人だけ。残りはすべて帯広市を中心とした北海道で採用した人たち」と,帯広松下電工社長の野口博信氏は話す。
 同社は松下電工制御機器本部傘下の生産子会社として1973年に設立された。当初は配線器具などを製造していたが1983年に車載リレーに参入。特に2000年以降,自動車の電子化に伴って生産を大きく伸ばした。生産だけにとどまらず,市場調査から商品設計,製造,営業まで一括して担う,車載リレーの中核事業体へと進化してきた。(以下,「日経ものづくり」2007年12月号に掲載


図●狭口コネクタに精密金型技術を利用
狭口コネクタ(a)の接続部(b)の加工には,帯広松下電工が製造した精密金型が使われている。精度はサブミクロンオーダー。



 国内の空洞化といった心配は全くしていない」─三菱電機における昇降機事業の拠点である稲沢製作所の生産性推進部長の川邊曉氏はこう語る。拡大する海外需要に対応する上で,キーコンポーネントを製造し,海外工場を支援する同製作所の役割がますます重要となっているからだ。(以下,「日経ものづくり」2007年12月号に掲載


図●世界一高い173mのエレベータ試験棟
昇降機事業のマザー工場である稲沢製作所内に2007年9月に竣工した。2008年1月より稼働開始予定。



 2007年9月,安川電機の行橋事業所(福岡県行橋市)に新設したインバータ工場が本格稼働を開始し た。「DRIVE CENTER」と呼ぶ新工場は,従来の約2倍となる150万台/年の生産能力を持つ。インバータ事業をけん引する工場として,新しい生産技術/方式を生み出して品質や生産性の向上を図るとともに,生産方式の標準化を進めて海外工場へ展開する。(以下,「日経ものづくり」2007年12月号に掲載


図●ロボットを使った自動化ライン 小型製品を対象としたフレキシブル自動組立ライン。ヒートシンク供給,コンパウンドの塗布,ねじ締め,絶縁紙挿入,はんだ付けなど前工程(全工数の65%)を14台のロボットが自動でこなす。



 大出力のロボットが,完成したPDPを次々と梱包していく(図)。ごく当たり前の自動化工程に見えるが,実はこの工程には最新の安全対策が組み込まれている。  ロボットは柵で人から分離され,ドアには安全装置を組み込んでいる。通常の運転モードでは,ロボットの動力源を遮断しないとドアは開かない。しかし,扱うディスプレイの大きさが変わって,ロボットの取り位置を調整する際には,柵内での作業が必要になる。(以下,「日経ものづくり」2007年12月号に掲載


図●最新の安全思想と安全装置を取り入れたロボット PDPを梱包する際に使うロボット。大型のガラス基板を扱うため高出力なので,重大事故を招きかねないと判断。機械安全の国際規格に準拠した安全方策を実施している。

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