日経ものづくり 特集

有効求人倍率が全国平均の1.06倍と比べて0.59倍(2006年度時点,厚生労働省「職業安定業務統計」)と低く,優秀な人材を確保しやすい北海道。広大な土地を有し,全国平均と比べれば固定費も安い。そうした地の利を生かし,徐々に力をつけているのが地場の製造業者だ。農業機械や水産加工機械など,農作物や水産資源などの地域資源と関連する分野で実力を発揮してきた同地域の地場企業だが,最近ではそれ以外の分野でも高度な技術力や安定した量産力を有する“強者”たちが出始めている。(中山 力,富岡恒憲)



 植松電機は,建設廃材などの廃棄物から鉄などを分別する作業で利用されるマグネットシステムを 開発・生産するメーカーだ(図)。油圧ショベルに取り付けて使えるため,作業を効率化できる。OEM(相手先ブランドによる生産)供給を含め,同社の国内シェアは9割を誇る。(以下,「日経ものづくり」2007年11月号に掲載


図●マグネットシステム
小型,軽量,低消費電力を追求することで,油圧ショベルのアタッチメントに取り付けることを可能にして,廃棄物処理の作業性を高める。



 北日本精機は,内径が数mm以下という極小軸受を中心に開発・生産するメーカーだ。外輪にフランジの付いたタイプや外輪の表面が丸みを帯びているたる型といった特殊な軸受,薄型軸受なども手掛ける(図)。(以下,「日経ものづくり」2007年11月号に掲載


図●北日本精機の軸受
極小軸受や薄型軸受,フランジ付きといった特殊ベアリングなど,大手メーカーが手掛けにくい小ロット品をラインアップする。



 発光ダイオード(LED)やセンサ,半導体などのデバイスで使われる基板(ウエハー)の切断や加工に 使うレーザ加工装置。その心臓部とされる光学エンジンを主に開発・製造しているのが,レーザーシステム(本社札幌市)である。同社では,まだ保証や保守の体制が不十分ということから,自社ブランドのレーザ加工装置は扱っていないが,製造装置メーカー向けに光学エンジンや加工補助機能を供給している(図)。(以下,「日経ものづくり」2007年11月号に掲載


図●レーザスクライブ装置の加工部
光学エンジンで成形したビームを照射して,テープ上に固定したウエハーの表面に溝を彫る。ビームがウエハーから外れる瞬間を検出してビームの照射を停止させる機能や,ビームのオートフォーカス機能も加工補助機能として提供する。



 日本全国でも造れるところは数少ないとされるステンレス鋼の鋳物を得意とするメーカー。積極的に設 備投資を進め,量産への対応力を強化する鋳物メーカー。本州では人材確保が難しく,厳しい環境下におかれる鋳物産業だが,北海道では少し事情が違う。有効求人倍率の低さから優秀な人材を確保しやすく,土地代や人件費も安い。巣の要因の一つとなる湿気も,梅雨がないので問題になりにくい。そうしたメリットを生かし,北海道は今,新たな鋳物基地へと変貌しつつある。(以下,「日経ものづくり」2007年11月号に掲載


図●原子力発電所のポンプに使うインペラ用の鋳物 (札幌高級鋳物)
材質はステンレス鋼。



 ニッコーは,水産物の加工機械を手掛けるメーカーだ。「魚や貝などの水産物は形状が不定形で,鮮度 の良さを保つ必要があり機械化が難しい」(ニッコー代表取締役の佐藤厚氏)。同社の最大の強みは,既存のやり方にとらわれない発想力である。(以下,「日経ものづくり」2007年11月号に掲載


図●生のホタテ貝を自動でむく装置
ホタテ貝の貝柱を殻から生のままで取り出す装置。



 東洋農機は,ジャガイモやビートなどの収穫機,農薬散布機,耕起・砕土機械などを開発する農業機械メーカー。特に,ジャガイモの大型収穫機での国内シェアは70%(図)。一時期,農家の収入減の影響で販売 台数が減少したが,2007年には回復し,受注に生産が追い付かない状況だという。(以下,「日経ものづくり」2007年11月号に掲載


図●ジャガイモ収穫機(ポテトハーベスタ)
東洋農機は,畑からジャガイモを掘り起こして土塊や石,茎葉と分離するジャガイモ収穫機で高いシェアを誇る。

「日経ものづくり」の年間購読および一冊購入の申し込み
定期購読者限定サービス(無料):記事検索/PDFダウンロード